眠れぬ孤島は船を待つ
2017年5月制作
三島由紀夫の「潮騒」を読んだ。
孤島に暮らす若い男女が密かに惹かれ合う、という言ってしまえばいわば王道的な大筋よりもその文章の美しさにただただ嘆息するのみであった。
夜の闇に揺れる海面の、嵐の日にしなる梢の描写のなんと美しいことか。
例に漏れずすーぐ影響受けちゃう私は「海とか孤島とかなんかそういう感じの曲を書きたい」とぼんやりと思ったのである。
結果出来上がったのは、全く別のお話でしたが。
「昔々、
地図にも載っていない海のはずれに隕石の欠片が集まり形成された寂しい孤島がありました。
煤けたような黒ずんだ岩肌に侘しく草木が茂るその島には鳥も魚も寄り付かず、
ただ行き先を見失い疲れ果てた漂流船が最期の安息を求めて息も絶え絶え漂着するのみでした。
孤島へ流れ着く漂流船はそれぞれがそれぞれの物語を持っていました。
七つの海を回った話、2000年に一度の大嵐を勇敢にもくぐり抜けた話
それらの物語を聞くことだけが孤島の生き甲斐でありました。
そしてその物語ごと、孤島自身をどこか見たことも聞いたこともないような未知の世界へ連れて行ってくれる船が現れる日を夢見ていました。
しかし残酷にも結末は決まっていつも同じです。
疲れ果てた船はどれも皆やがて腐り果て、水底深く沈んで行くのでした。
永い永い時を経て、孤島は今世界中の誰よりも多くの事を知っています。
しかし世界中の誰よりも無知で孤独なままです。
今も昔も、孤島の見つめる景色は途方も無く広がる海だけです。
それでも未だ、この愚かで哀れな孤島はまだ見ぬ物語を乗せた船が訪れるのを待っているのでありました。
今この瞬間も、地図にも載っていない海のはずれで。」
っていう夢を見た。
っていうお話。
いつか誰かが劇的で運命的な変化を運んでくれるんじゃないかとただ待ち侘びていた、いつかの自分が少なかれ投影されています。
本当はそれだけじゃないけど。
どこからどこまでが物語か、それは私にも分かりません。
なんつってな
長くなりました。
以下歌詞です。
『眠れぬ孤島は船を待つ』
夢を見るよ 同じ夢を何度も
そう昨日も
隕石のかけら散らばる海に
ぽつり浮かぶ孤島の夢
鈍色の波に ゆらゆら隠れ現れ
飛び交う鳥の 群れを恨めしげに
見上げている
漂流船を匿い 永遠を誓えど
最後は皆
水底深く沈んで行く
何度弔ったことだろう
恋しさは冷たい 波に打たれ
憎しみから 空虚に変わる
それでも夜はまた 思い焦がれて
嵐が言うのさ
「お前はまるで年老いた子供のよう
果てない時を見届けても夜は小さな孤独に泣くのね」
見透かしたように言うなよ
そんな分かりきったこと
それでもまだ この愚かな
眠れぬ孤島は船を待つ
宛のない予感を
抱いて眠るのかい今日もまた
潮騒に似た胸騒ぎがするから
私はまた
嵐が言うのさ
「お前はまるで年老いた子供のよう
果てない時を見届けても夜は小さな孤独に泣くのね」
見透かしたように言うなよ
そんな分かりきったこと
それでもまだ この愚かな
眠れぬ孤島は船を待つ
船を待つ
君を待つ...